017-5_岡山県/備前刀剣王国☆その2 備前刀剣王国の本気と書いてマジと読む 〜福岡一文字と備中水田国重一派(1泊2日)
翌日。
元々この日はマイ生誕記念として長船に行く予定にはしていたのですが。
(前回、福岡の市にいきたいとか言ってたやつです)
その前の週くらいに始まった「備中水田国重一派奉納刀研磨プロジェクト」の説明会がある、ということで。
そちらにも参加することにしました。私もクラウドファンディングに参加していたので。
そしてその後、水田国重の刀鑑賞会もある、とのことで。
本物の刀剣をさわる機会などたぶんこの後ほぼないだろう、と思い。チキンぼっちながらも参加してみることにしました。
というわけで。
この日の流れは大変盛りだくさん。
うわー、前回にも増して盛りだくさん……
果たして1日で回れるでしょうか??
時系列順に記事にしていくので、読みにくいかもしれませんがおつきあいください。
天王社 刀剣の森
説明会の受付が9時受付開始だったので、9時頃香登駅に到着。
その足で、刀剣の森に寄り道してから、博物館へ行くことにしました。
住宅の中にぽっこりと現れる、神秘的な森。
ここが備前長船刀剣発祥の地、とされている、天王社 刀剣の森です。
足利尊氏が寄進したといわれている森です。
おそらく当時から姿を変えていないのでしょうね。
日曜の朝早い時間ということもありますが、誰もいなくて、静かな森です。
この「天王社」というのは、通称名であり。
神社の名前としては「靱負(ゆきえ)神社」というのだそうです。
鍛冶屋の神である一つ目(片目)の神を祀っているそうです。
神社の壁に貼られた謎の「め」。*1
最初「め」が貼られまくっていて何かと思いましたが。
眼病平癒の霊験ありといわれているそうで、「め」と書いて貼ると、御利益があるのだそうな。
また、長船の刀鍛冶は「目」を使う細かい仕事が多く、目を守るために信仰していたのだとか。
まずはお参りをして、長船ネタの小説を発表させてくださいとご挨拶しました。*2
奉納刀研磨プロジェクト 説明会
いよいよ10時になり。長船刀剣博物館のホールにて、奉納刀研磨プロジェクトの説明会が始まりました。
今回のプロジェクトは、日本美術刀剣保存協会 岡山県支部が主体となり
、神社に奉納されたまま手入れができない奉納刀を研ぎに出そう、というものです。
せっかく神社に奉納されていても、過疎化・高齢化が進んだ神社には、後継者がいないから保管もままならないし、手入れに回す費用が捻出できない。
そこで、相談を受けた岡山県支部の皆様が、良い刀剣を後の世へ残したいという有志の皆様へ呼びかけ、クラウドファンディングを利用し、費用を広く募ろうというプロジェクトを起こされた、というわけです。
太刀を研ぐのは、包丁をちょっと研ぐのとはわけがちがうのです。
その道のプロにお願いすることもあり、1口研ぐのに約100万円かかるのだそう。
30年前、同様のプロジェクトがあったそうなのですが。
研磨のための費用を集めるのに、約8年かかったのだとか。
だけど今は、ネットの海が広がっていて、岡山だけでなく全国から刀剣ファンの皆様のお力が借りられる。
便利な世の中になったものです。
詳しくはプロジェクトの説明ページも見ていただければと思います。
→奉納刀研磨プロジェクト 支援金のお願い
研磨第一目標の刀は、備中水田住大月八良左衛門尉源國重。(上)
第二目標は、備中州中津井郷大月世龍子源祐国。(下)
机に置いてあるのは、奉納刀用の大きな鞘なのですが。すでに朽ちてボロボロでした……
この会に参加して良かったなと思ったのは、経緯を詳しく知れたのも良かったのですが、内容を説明された実行委員長が、途中涙で言葉が詰まった場面を見られたこと。
刀剣に関する情熱・向き合う姿勢ももちろんですが、このプロジェクトを絶対に成功させようという空気を感じることができたことは、本当に良かったと思いました。
備中水田の刀剣にはまだまだ不明なことも多く、今回の研磨により、さらに研究が進んで解明されることもあるだろう、とのこと。
また、研磨後は岡山県立博物館へ管理を任されるとのことで、研ぎっぱなしになることもないようです。
説明会開始時点で、第一目標である50万円は、クラウドファンディング上で達成されていました。
さらに、この日の説明会で約40万円の支援金が集まったそうです。
現在は第二目標のための費用を広く募集されているようです。
興味を持たれた方は是非、ご参加いただければと思います。
クラウドファンディングでも良いのですが、もし長船刀剣博物館に足を運ばれる機会がありましたら、直接職人さんにお渡ししても良いようです(クラウドファンディングは手数料が引かれるので……)。
→奉納刀研磨プロジェクト 支援金のお願い
※日本美術刀剣保存協会 岡山県支部のPJ概要説明ページです
→神社に眠る錆びた奉納刀を研磨して、美しい姿で後世に伝えたい。
※クラウドファンディングページです
備前刀剣王国後期鑑賞
13時から刀剣鑑賞会があるので。
待ち時間の間に、後期展示を鑑賞してきました。
2回目だ……と思いきや。
前日の講習会でうんちくを色々仕入れていたため、楽しく見ることができました。
特に1階の、兼光などの嫡系・傍系元重・長義以外の流派(小反り物など)を知れたのは本当に良かったです。
前回1階は駆け足だったからな(笑)
講演会メモに、実物のメモを書き加えたりして。
大変勉強になりました。
もちろん、福岡一文字もちゃんと見ましたよ!
一文字派というのは、前期は細身の刀が多いのですが、後期になるにつれて幅広になっていく、らしいです。
あと。
前回後悔した、図録もちゃんと買いました。
重かったけど、後悔はしていない……
国重刀鑑賞会
13時からは、マナー講座の後、鑑賞会でした。
お刀は、午前中にちなみ(?)、備中水田から5口。
今まで、博物館や美術館で、ガラスケース越しに見ていただけだったから気楽だったけど。
今回は直接持たせていただく。すごく緊張しました。
初心者的には、マナー講座があって本当に良かったと思いました。
刀剣は意外と繊細なんですね。
しゃべる唾が飛べばそこから錆びる。机にことりと当たったダメージで錆びる。
もちろん、実戦刀と美術刀とでは手入れの方法が違うのでしょうが。
ここ目の前にある刀剣は美術品。それも、うんと昔に作られた文化財たちばかり。
手入れが必要になるーー要するに研ぎが必要になると、文化財の身を文字通りすり減らしてしまうことになるのです。
本当に、本当に、緊張しました。
ネットで教科書をDLして読んでも、付け焼き刃では頭に入らないくらい、たくさんのお作法があります。
とりあえず、マスクだけ持って行ったよ……
私は、この後福岡の市まで行くこともあり、槍とその隣の刀だけ、鑑賞させていただきました。
まずは、見せていただくことに感謝し一礼。そして、鑑賞し、最後にもう一度感謝の一礼。
鑑賞中は、緊張してほとんど頭の中が真っ白でしたが。
槍も刀も、きちんと垂直になるように持てば、重量はそこまで感じられないのだなと思いました。
もちろん、南北朝時代の刀ように、刀身の軽量化の方法も考えられているのでしょうが。
机に当たらないように、そっと平行を保ち持ち上げて……*3
刀身や刃紋などを鑑賞します……刀身に近付くときは、自分の右足を引き体を近付け、鑑賞します。
はー。汗びっしょりだったけど、良い体験をしました。
ありがとうございました!!
城之内(伝兼光屋敷跡)、造剣の古跡碑など調査
その後、急ぎ足で、長船の周辺古跡を調査しました。
ええ、ほとんどが小説のネタの為なので、写真撮影と言っても過言ではありませんでしたが。
鑑賞会を1時間で切り上げたとはいえ、福岡の市は長船駅周辺なので、どう考えても福岡の資料館には間に合いません……
また今度かな……今度があればだけど……
さてさて。
気を取り直して、まずは博物館周辺の、長船の古跡を巡ることにしました。
どう見てもひとのうちなのですが。
プレハブの倉庫の裏が小高い丘っぽくなっていて、椿の花*4 が紅色の花びらをたくさんつけているのが印象的でした。
足利尊氏から、太刀を打った褒美として兼光に与えられたそうです。
100m四方に壕を巡らせ、四方に櫓を建てた城に、代々鍛冶が居住し、鍛刀したと言われているそうです。
が、1483年の福岡合戦の時に、城や付近の民家がすべて焼き払われてしまったのだとか……
石碑の通り、長船刀工の菩提寺です。
そして、慈眼院のすぐそばに、造剣の古跡碑があるのですが……
どこからどう見てもひとのうちです。ありがとうございました。
大正14年、備前長船の史跡を保存しその偉業を後の世に伝えるため、横山元之進祐定は、私財を投じて自分の屋敷に造剣の古跡碑を建立しました。
この場所は移設後の場所らしいので、ここが自宅ではないようですが。
文字は犬飼毅翁のものだそうです。
長船刀匠たちのお墓です。
七兵衛祐定、大和大碌祐定、祐包などのお墓があります。
福岡一文字造剣之跡碑、福岡の市など調査
そしてうっかりですが。
駅裏の住宅地から、福岡の市まで、約1kmあるのですよ!!
行きましたけど。
行きましたけども。博物館からすでに3km歩いている身としては……ヘルニアが……げはぁ……
福岡一文字造剣之跡碑。
これらが、住宅地の中にひっそりと佇んでいます。
誰もいなさすぎて、犬にほえられて、犬をとがめる家人のお怒りの声まで聞こえたり……
ま、15時半すぎてたからね……
ここは、その昔、刀剣博物館の職人さんにおすすめしていただいたお店なのですが。
今になって、なぜこのお店をすすめられたかが手に取るようにわかってしまった……!
職人さんは、私や相方、Mつんを当時流行っていた「歴女」だと勘違いされていたのですが。*5
博物館の周りにも食堂はあることはあるのですが。
そりゃね。歴女相手ならここ、おすすめするよね。黒田家の菩提寺がすぐ裏にあるし。なにしろ、お店の名前が「一文字うどん」さんですからね。
ああー……当時の私のバカ……もっと勉強しとけよ……
その他、だんじり倉庫*6を見てから、駅までの1kmの道のりを歩いて帰りました。
そして、携帯の万歩計、10km超えてた…病み上がりなのに…
やっぱり、家に帰ってから、2日くらい死にましたが。
行って良かったと思いました。
この日は雨予報でしたが、小康状態の女のパワーをいかんなく発揮しました。ふふっ。目的が達成されて良かったです。
でも次回は、長船駅にレンタサイクルがあるらしいので、勇気を出して自転車をかりようとおもいます……(作文)